耳の働きについて
耳には大きく分けて2つの役割があります。1つは、周囲の音を聞き取り、脳に伝える役目です。耳たぶによって集められた音は、外耳道、鼓膜、耳小骨、蝸牛神経などを通して大脳に伝えられ、高い音から低い音まで、様々な音や言葉を正確に理解することが出来ているのです。
もう1つは、体のバランスをとる役目です。私たちが真っ直ぐ立っていられるのは、身体のそれぞれの位置を把握し、手足や頭などが曲がっていないかを感じ取れているからです。この平衡感覚をつかさどる上で、耳にある前庭器官や三半規管が重要な役割を果たしています。
こんな症状の方は耳鼻咽喉科医にご相談を
- 耳が痛くて気分が悪い
- 耳の痒みがある
- 耳の奥に不快感があり、頭がボヤっとする
- 耳の中から液体が出てきた(耳の中から異臭がする)
- 周囲の音や声が聞こえにくくなった(自分への呼びかけに気づかないことがあった)
- 家族や友人から「話し声が大きい」と指摘されたことがある
- 耳鳴りがする
- 耳の奥に違和感がする
- 聞き間違いが増えた
- 耳の中が塞がっているような感じがする
- 天井がぐるぐる回るような眩暈がする
- 耳垢が溜まっているなど
主な耳の病気
急性中耳炎
急性中耳炎は、4~10歳くらいのお子さまに多く見られる耳の病気です。お子さまの耳管は短くて水平に近く、鼻や喉の奥に溜まったウイルスや細菌が中耳に入り込みやすい構造になっています。そのため、細菌などが増殖して中耳に炎症を引き起こしやすいのです。主な症状は、耳の痛み、耳が聞こえにくくなる、耳の閉塞感、耳漏(耳垂れ)、中度の発熱などです。
小学生以上のお子さまならば、耳の痛みや違和感を自分から訴えてきますが、症状を伝えられない乳幼児の場合は「しきりに耳に手をやる」、「機嫌が悪くなる」などの異変が見られます。このようなときは、お早めに耳鼻科を受診し、耳の病気が起こっていないか確かめるようにしましょう。
急性中耳炎になったときは、耳鼻科にて処置を行ったうえで炎症を和らげる薬を耳の中に入れます。さらに抗生剤や消炎剤をお渡ししますので、決められた時間に服用するようにしましょう。これによって症状は治まりますが、鼓膜の状態が元通りになるには日数がかかります。
慢性中耳炎
急性中耳炎の治療が不完全で治癒していなかった場合など、鼓膜に穴が開いたままになって慢性的な炎症が続いてしまう疾患です。鼓膜には再生力がありますので、通常は穴が閉じていくのですが、炎症が収まらない状態が続くことにより、再生が追い付かなくなり、慢性中耳炎となります。
耳の痛みや発熱はあまり見られませんが、鼓膜に穴が開いているので、外部の声や音がきちんと聞き取れず、難聴となってしまうことがよく見られます。また、外から菌が入り込んでしまい、耳垂れを繰り返すこともあります。鼓膜や皮膚の一部が奥の方へと入り込むと、真珠腫という塊が出来て耳小骨を壊してしまうこともあります。
具体的な治療法は、軽度ならば中耳の粘膜の腫れや膿を取り除くため、抗菌薬を点耳したり、消炎剤を使用したりします。鼓膜の穴が大きいケースなどでは、鼓室形成術という手術を選択することもあります。中耳の病変組織を取り除き、中耳炎によって破壊された耳小骨を修復することによって、耳の機能回復を目指すのです。
難聴
難聴は、周囲の音や声などがきちんと聞こえなくなる病気です。損傷の起こる部位などにより、伝音難聴、感音難聴などがあります。このうち伝音難聴は、主に中耳の異常によって起こるタイプです。中耳炎や耳垢などで起こることもありますし、中耳にある耳小骨の奇形や後天性障害などで起こることもありますが、いずれの場合でも「大きな声でないと聴こえづらい」、「声がこもって聞こえる」、「水が溜まった感じがする」といった症状が見られます。
一方、感音難聴は、内耳や聴神経の異常によって起こります。遺伝的な要因、胎児期における発達異常もあるため、まずは新生児期に必要な検査を受けるようお勧めいたします。これにより、早期に治療を開始できます。また、後天的要因としては、加齢、外傷、騒音、薬剤性、髄膜炎、聴神経の腫瘍などがあり、必要に応じて原因疾患の治療を行なったり、人工内耳の手術を検討したりします。
めまい
私たちは目や耳、足の裏、全身の筋肉・関節などから得られた情報をもとに自分と周囲の位置関係を把握しています。そのため、これらの器官に問題が生じ、正確な感覚が得られなくなると、平衡感覚が損なわれたりし、めまいの症状が引き起こされます。また、貧血や心臓疾患によって脳に十分な血液を届けられないときもめまいが生じることがあります。
通常、内耳の三半規管などに起因するめまいは、命に影響することは少ないと言われています。しかし、脳の病気によるめまいは、命に影響することもありますので、めまいを放置することは危険です。特に、強い頭痛、周囲の景色が二重に見える、ろれつが回らない、手足が痺れてている、といった症状が起こっているときは、すぐに救急病院を受診するか、最寄りの耳鼻咽喉科で早急に検査を受けるようお勧めいたします。
当院では予約制で第1.3金曜日の午後に補聴器外来も行っています
年齢が高くなるにつれ、だんだん聞こえがわるくなったと感じられる方が増えていきます。聞こえが悪いと感じたら、まず耳鼻咽喉科を受診してください。
耳垢がつまっていないか、鼓膜の状態はどうかなどをチェックし、耳の病気がかくれていないかをチェックします。そのうえで聴力検査を行い、補聴器が必要かを判断します。
補聴器外来にて専門の業者に適切な補聴器を作成してもらい、その後も定期的に補聴器の調整(フィッティング)や清掃をうけることができます。 無料で補聴器を貸し出すことも可能ですので、実際におうちで使ってみて検討していただくことができます。
2018年度から補聴器の購入費用を確定申告のときの医療費控除として申請することができるようになりました。
そのためには補聴器を購入する前に補聴器専門医を受診し、補聴器専門医が記入した補聴器適合に関する診療情報提供書を受けとります。それを販売店に提出し補聴器を試用します。補聴器購入をきめたら、領収書と補聴器適合に関する診療情報提供書の写しをもらいます。
この補聴器適合に関する診療情報提供書の写しと領収書は、税務署から提出を求められることがありますので大切に保管しておいてください。